第二種 電気工事士の計算問題攻略(実践編)

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目次

はじめに

こちらでは、第二種電気工事士の試験に出題される計算問題について基礎~実践(出題頻度の高い過去問をpick up)までの解説をしています。大まかな分類としては以下の3つとなっています。

  • 基礎知識
  • 公式等を覚えれば単純に解ける問題
  • 色んな知識が絡みあって出題される問題

第二種 電気工事士の計算問題攻略(ファーストステップ)を見ておくと、計算問題の傾向と全体像の把握がしやすいと思います。下記より確認してみてください。

また、いつでも確認出来るようにPDFでのまとめもダウンロード可能ですので、活用してみて下さい。

基礎知識

➀オームの法則

V:電圧(ボルト)、I:電流(アンペア)、R:抵抗(オーム)の関係式は下記のとおりです。これをオームの法則と呼びます。

②直列と並列接続の特徴(分圧と分流、合成抵抗)

・直列回路の特徴について

[電流]

・電源電流=電流A=電流B

(回路の電流値はどこも同じ)

[電圧]

・電源電圧=電圧A+電圧B

(電圧はそれぞれの抵抗にて分けられる)

[合成抵抗]

・回路の合成抵抗=抵抗A+抵抗B

 左図では60Ω+40Ωで合成抵抗は100Ωです。

※ちなみに直列回路の抵抗が3以上でも、下図のように全ての抵抗値を足して求められます。

・並列回路の特徴について

[電流]

・電源電流=電流A+電流B

[電圧]

・電源電圧=電圧A=電圧B

(回路の電圧値はどこも同じ)

[合成抵抗]

・回路の合成抵抗・・和分の積で求める。                 ※以下に説明します。

・和分の積について

和分の積とは並列回路の合成抵抗を求める式の事です。分母の部分を「たし算」、分子の部分を「かけ算」して求めます。

先ほどの、並列回路で合成抵抗を求めると以下の様になります。

・並列回路の合成抵抗の簡単な求め方

下図の様に、並列回路のそれぞれの抵抗の値が同じ場合、合成抵抗は1つの抵抗の半分の値となります。

上記の場合で考えると、回路の合成抵抗は4Ωの半分で2Ωが答えとなります。

これを覚えていれば、計算が楽になります♪

さて、次に抵抗が3つ以上、並列となっている回路の場合についてはどうなるのでしょうか?下の電気回路をもとに解説をします。

和分の積は2つ並列となっている抵抗の合成抵抗値を求める場合にのみ使用できるものなので、一度に和分の積で回路の合成抵抗を求める事はできません。

電気回路の抵抗が3つ以上、並列となっている場合の合成抵抗の求め方を説明します。

まず、3つの抵抗のどれか2つの合成抵抗を先に求めて、抵抗の数を減らすようにして計算をします。

上図の電気回路の場合、10Ωと40Ωで和分の積を使用して合成抵抗を求めます。

すると、回路の抵抗は8Ωと8Ωの二つとなりました。

ここで先ほど上記で説明した「並列回路の合成抵抗の裏技」を使用すると、

8Ωの半分の値なので、回路の合成抵抗は4Ωと求めることができます。

では、過去問をやってみましょう!!

合成抵抗 R1年下期の問1

 合成抵抗 R4年下期(午前)の問1

合成抵抗 R5年上期(午後)の問1

③電気回路関連

・特徴的な電気回路における電気の流れ方を理解しよう!

電気工事士の計算問題を解く上で「独特な表現」や「電気がどの様に流れるか」を理解すると、問題がスムーズに解けるようになります。以下に解説をします。

➀回路を構成していない部分に電気は流れない。

②電圧降下

電圧降下とは、電流が流れる際に抵抗によって電圧が低下する現象の事。

電気の流れを立体的に捉えると分かり易いです。

過去問に出てくる、「aーb間の電圧」とは下の右図の青いラインと赤いラインの電圧差を指します。

平面で考えると電圧降下は理解が難しい。立体的に考えると「降下」というイメージが沸きやすいです。

では、過去問をやってみましょう!!

電圧降下 R4年下期(午後)の問1

電圧降下の問題です。まず、この直流回路の電流を求めます。

電圧は100V+100V=200V、合成抵抗は40Ω+60Ω=100Ω。

オームの法則を使用して200V÷100Ω=2A。

抵抗40Ωのところの電圧をオームの法則で計算します。2A×40Ω=80Vと分かります。

さて整理してみましょう。

③回路スイッチについて

スイッチは抵抗負荷が非常に小さい(ほぼセロ)です。

電気は抵抗の小さい方に流れるという特性があります。よって、抵抗の少ないスイッチの方に電気が移動して流れる事となります。分かりやすく図で説明すると以下のようになります。

では、過去問をやってみましょう!!

スイッチ+合成抵抗 H28年下期の問2

抵抗は直列で接続されているので、30Ω+30Ω=60Ω。これが答えとなります。

スイッチ+電圧降下 R1年上期の問1

・回路の構成を示す「〇相□線式」について

電気回路を示す表現に「〇相□線式」というものがあります。説明すると以下の通り。

ここは、難しく考えず「ふーん、なるほど」という感じで捉えておきましょう。

三相負荷の電気回路について

では、過去問をやってみましょう!!

三相負荷の電気回路 R2年下期(午後)の問5

ちなみに、Δ結線の電気回路にて線間電圧を求める問題については現状では出題されていません(今後、出題される可能性がない訳ではありません)。

代わりにΔ結線の電気回路では、以下のような「消費電力」や「断線」の問題がよく頻出されています。

これらの問題については、各項目のところで解説します。

公式等を覚えれば単純に解ける問題

④電線について

電線抵抗

電線は電気を流すためのものです。

実は、電線自体にも実は抵抗があります(電線抵抗は非常に小さい為、電気回路の計算の多くは、電線抵抗を無視して計算しています)。電気工事士の試験には電線の抵抗を計算させる問題が出題されます。

電線の問題のパターンは以下のとおりです。

➀与えられた電線の抵抗値が最も近い素材はどれかと選択肢から選ぶもの。

②電線の電気抵抗を示す式を選択肢より選ぶもの。

③素材AとBの2つを提示して、Aの抵抗はBの抵抗の何倍かと比較するもの。

④電線と抵抗と許容電流に関する記述で誤っているもの。

電線の抵抗Rは以下の式を用いて求めます。

では、過去問をやってみましょう!!

電線抵抗 R1年下期の問2
電線抵抗 R5年下期(午後)の問2

②「電線の電気抵抗を示す式を選択肢より選ぶもの」の問題ですね。

公式を選択する問題です。これはそのまま覚えるしかないですが、覚えていれば点数がとれる問題です。

下記のように単位変換だけ注意しましょう。

電線抵抗 R5年下期(午前)の問2
電線抵抗 R1年上期の問2

④「電線と抵抗と許容電流に関する記述で誤っているもの」の問題です。

電線の許容電流

電線の許容電流(どれくらいまで電流を流すことが出来るか)は、電線の種類や太さによって以下に定められています。電線管(ケーブル等)に電線を収める場合の許容電流を求める式は下記のとおりです。

では、過去問をやってみましょう!!

電線の許容電流 H29年上期の問7

直径2.0mmの電線の許容電流は上の表より「35A」となっています。これを2本管内に収めるので電流減少係数0.7をかけて求めます。35×0.7=24.5Aとなり、これが答えとなります。

⑤三相誘導電動機

電動機とはモータの事で、電気を動力として回転する機器です。

三相誘導電動機に関する問題は以下のものとなっていますので過去問を通して必要な知識をつけていきましょう。

では、過去問をやってみましょう!!

三相誘導電動機 R1年上期の問14

三相かご誘導電動機 R2年下期(午前)の問14

上記は、ハが答えとなります。「回転速度は周波数に比例する」ので、周波数が減ると回転速度は低下します。

三相誘導電動機 R3年上期(午後)の問15

上記は、イが正解です。コンデンサは三相誘導電動機だけでなく、機器や「回路の力率の改善」に使用されます。

三相誘導電動機 R3年下期(午前)の問22

上記は、イが答えとなります。三相誘導電動機回路に力率を改善するためのコンデンサは、「手元開閉器の負荷側に電動機と並列に接続」します。

⑥分岐回路の過電流遮断器

過電流遮断器とは幹線(大本の線のこと)に定格電流以上の電気が流れないように保護する装置です。

分岐回路の過電流遮断器と電線の許容電流については以下の設置条件があります。

試験では幹線の分岐点から過電流遮断器を設置した場合の許容電流の最小値などを問う問題が出題されます。では、過去問をやってみましょう!!

分岐回路の過電流遮断器 H30年上期の問9

幹線の分岐点から過電流遮断器までの距離は6mなので、先ほどの上の表より「定格電流の35%以上」という条件となる。定格電流100Vの35%以上がa―b間の電線の許容電流の最小値となります。

これが答えとなります。

色んな知識が絡みあって出題される問題

⑦熱量、電力(消費電力)、電力量

電気抵抗に電流を流すと熱が発生する。これを電流の発熱作用といいます。

電流が1秒間に流れてする仕事を「電力(消費電力)」といいます。

ある時間内に消費または発生した電気エネルギーの総量を表すものを「電力量」といいます。

熱量H、電力P、電力量Wの関係式等は以下とおりです。

では、過去問をやってみましょう!!

熱量+電力量 H30年下期の問4

60gの水を20Kに上昇させるのに必要な熱量は、60×20×4.2=5040kJ。

Jに単位変換すると5040000[J]。

1[J]は1[W・s]の電力量に等しいので、5040000[J]は5040000[W・s]に置き換えることが出来ます。

求める単位は[㎏・K]なので、単位変換して5040000[W・s]→5040[kW・s]。

5040[kW・s]を更に、[kW・h]に変換する必要があります。

5040÷3600=1.4[kW・h]が答えとなります。

熱量 R3年下期(午後)の 問3

発熱量H[J]=P[W]×t[s]の式を使用します。1時間30分を秒に単位変換すると5400秒。

H=500W×5400秒=2700000[J]。

求める発熱量の単位は[kJ]なので、単位変換します。

2700000÷1000=2700[kJ]となり、これが答えとなります。

電力量 R5年上期(午前)の問3

1[J]は1[W・s]の電力量に等しいです。

4[kW・h]を[W・s]へ変換すると、14400000[W・s]となります。

2時間30分は秒に単位変換すると9000秒です。

H=V×I×tの式に当てはめます。

14400000[J]=100[V]×I×9000[s]でI=16[A]となり、これが答えとなります。

熱量 R4年下期(午後) 問3

H[J]=V×I×t(s)を使用します。1時間20分を秒に単位変換すると4800秒となります。式に当てはめるとH=100V×4A×4800(s)=1920000[J]。

単位を[J]から[kJ]へ変換すると1920[kJ]となり、これが答えとなります。

合成抵抗+消費電力 R5年上期(午後) の問1

熱量 R2年下期(午前)の問3

H[J]=I²×R×tにて求める。1時間を秒に単位変換すると3600秒。

  =15×15×0.2×3600

  =162000[J]

162000[J]を[kJ]に単位変換すると162[kJ]となり、これが答えとなります。

⑧交流回路

家庭のコンセントには正弦波交流と呼ばれる電気がきています(下図)。

では、過去問をやってみましょう!!

交流回路 R1年下期の問4

また交流回路の問題では以下のようなものも、出題歴がありますので確認しておきましょう。

交流回路 H29年上期の問4

交流回路 H26年上期の問1

実効値E=148÷√2    ※√2≒1.41

=104.9・・≒105[V]となり、これが答えとなります。

⑨交流回路のリアクタンス・インピーダンス

リアクタンスX[Ω]とは・・電流の流れにくさ。

インピーダンスZ[Ω]とは・・抵抗やリアクタンスを総称したもの。

公式については、まず「V=I×Z」を覚える。しかし、億劫になることはありません。

抵抗の総称としてZ(インピーダンス)いうものになっていますが、実はオームの法則の「V=I×R」と同様です。また、Zの部分は「抵抗R、リアクタンス(Xc・XL)」で、それぞれの値を2乗して足して、平方根(√)したものです。

※右側のコイルとコンデンサの両方がある回路だけは引き算が入っているので注意です。

では、過去問をやってみましょう!!

リアクタンス・インピーダンス R4年下期午前の問4

リアクタンス・インピーダンス R3年上期午前の問4

電力を消費するのは抵抗で、コイルは電力消費しないので覚えておきましょう。

抵抗にかかる電圧は100Vで、抵抗に流れる電流はオームの法則で求めます。

I=V÷R⇒I=100÷16=6.26[A]。

消費電力の式はP=V×Iにて100×6.25=625[W]となり、これが答えとなります。

リアクタンス・インピーダンス H30年下期の問5

⑩交流回路の力率

力率とは供給された電力のうち有効に働いた割合を示す値です。力率の公式は以下の3つです。

では、過去問をやってみましょう!!

力率 R3年上期午後の問4

力率 R5年下期(午前)の問4

力率 R4年下期(午後)の問4

⑪消費電力

電気回路にて負荷(電球など)は、電力を消費しながら動いています。

負荷が消費する電力のことを消費電力と呼びます。

単相2線式の負荷の消費電力と三相3線式の負荷の消費電力の消費電力は以下の通りです。

では、過去問をやってみましょう!!

消費電力+力率 R2年下期(午前)の問5

⑫電線の電圧降下

電線に電流が流れると、電線の「抵抗r×電流I」分の電圧が下がります(電線路の電圧降下と呼びます)。

では、過去問をやってみましょう!!

電線の電圧降下 H30年下の問6

電線の電圧降下 H27年下期の問6

電線の電圧降下 R4年上期(午後)の問6

電線の電圧降下 H30年下期の問7

電線の電圧降下 H23年下期の問題

公式を答えるだけの問題です。「電圧降下(V)=√3×r×I」が答えとなります。こちらの問題は10年以上出題されていませんが、仮に出題されてビックリしないように補足として紹介しました。

電線の電圧降下+電線抵抗 R4年下期(午前)の問6

⑬電線路の電力損失

電線に電気が流れると、電線自体の抵抗にてムダに電力が損失される(電線路の電力消失と呼ぶ)。

1本あたりの電線路の電力損失は以下の式で求められる。

中性性に流れる電流がゼロの場合なので、当然ながら中性性の電線抵抗はありません。

よって電線2本の電力損失と同様の式になります(うっかり電線は3本?としないように注意です。)

三相3線式の場合は

電線は3本なので、以下の式となる。

では、過去問をやってみましょう!!

電線路の電力損失 H27年下期の問7

電線路の電力損失 R5年下期(午前)の問7

電線路の電力損失 R3年上期(午前)の問7

電線路の電力損失 5年上期(午前)の問7

まず、図1の単相2線式回路の電力損失を考えていきましょう。

次に単相3線式回路の場合を考えます。

図1の電力損失は160W、図2の電力損失は40Wなので比較すると値が「小さくなる」が答えとなります。

電線路の電力損失 R5年下期(午後)の問6

電線路の電力損失 R4年上期(午前)の問6

実は「R5年下期(午後)の問6」と同じ問題です。電気回路の図の表記が異なっているだけです。

解説については上記(1つ上の問題)を参照して下さい。

⑭断線

電気回路が断線した際の電気の流れはどの様になっているかを知っておく必要があります。

断線の問題の場合は回路から断線部分を取り除いて考えるということでOKです(以下の例を参照)。

では、過去問をやってみましょう!!

断線 R4年上期(午前)の問7

断線 R3年上期(午前)の問5

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この記事を書いた人

ブログ管理者の「KIMIKUMA」です。
仕事の業種と関係なくゼロの知識から参考書を片手に独学で資格を取得しました。色々な資格取得での自らの体験記をもとにした勉強方法を発信中です。資格取得を目指す方の為になれるように頑張ります。
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